|
どこからかふっと流れてきた匂いや音に、昔の思い出がよみがえることがある。私の場合、それらはたいてい夏にまつわるものが多い気がする。
たとえば塩化ビニールの匂い。浮き輪とかビーチマットとかに使われてるアレは、海を連想させてくれるし、その年初めて付けたクーラーの匂いは、夏がやってきたワクワクな気持ちがこみ上げてくる。音と言えば18の夏、免許を取ってスグにクルマの中で聴いた小野リサのアルバムだ。彼女が唄う少し気怠いボッサを車内にかけながら、九州に向かってハンドルを握っていた。あてのない旅で、行く先はおろか、その日泊まる場所もまったく決めていなかった。今でも小野リサの唄声を聴くと、無限の世界に突き進んでいるような、何とも言えない晴れ晴れとした夏の日を思い出す。
|
 |
匂いや音。その他に「味覚」も、楽しい思い出とセットで脳みそにすり込まれる要素のひとつだ。去年、初めて奄美を旅した時、あるサーフショップのカフェで初めて柚子茶を飲んだ。柚子の香りがプンと漂う黄濁した液体はほんのり甘く、コップの下には細切りされた果肉がいっぱい沈んでいた。炎天下、波乗りを楽しんだ後には火照った身体に冷たい柚子茶を。しとしと島を濡らす雨降りの日には、温かなそれが染み渡った。飲み干した後には果肉をスプーンでほじくって食べるのだけど、シャキッと甘酸っぱく、これがまたとてもうまい。
のど越しや食感がすっかり気に入ってしまい、島にいた時は毎日のように柚子茶を飲んだ。トウキョウに帰る日のこと、港に見送りに来てくれた店の女の子に「ハイ、奄美を思い出してね」と、いつも飲んでいる柚子茶をプレゼントされ、ジンとした覚えがある。トウキョウに戻ってからも、なんか封を開けるのがもったいなくて、しばらく仕事机の一番目立つところに飾っておいた。
|
|
でも先日、あまりにも毎日が忙しくて、つい封印を解いてしまった。奄美で飲んだのと同じようにしていただくと、ほんのりした甘さとともに、あざやかな海の色と、島に吹くゆるい風と、奄美で暮らしているトモダチの顔がよみがえってきた。
それ以降、心が疲れてきたな、と感じた時、私は柚子茶を飲むようになった。残りもわずかになってきたある日、インターネットで検索してみると、奄美産だと思いこんでいたそれは、実は韓国のものだった。その国ではどこの家庭や飲食店でも親しまれている伝統的なお茶だそうで……、まぁどこで作られていようがそんなのは関係なくて、私にとって柚子茶は奄美を思い出す味として身体にすり込まれている。
今年は梅雨が明けて間もない7月のはじめころ、サーフボードをかついで島へ渡ろうと思っている。きっとその頃には、キンと冷えた柚子茶がとっても美味しいんだろうなぁ。
2005.04
|
●柚子茶
柚子を蜂蜜と砂糖にマーマレード状に漬け、瓶詰めしたもの。ビタミンとクエン酸が豊富で、疲労回復や美容に最適。保存料は一切使用していないそう。お湯に溶かして飲むのが一般的らしいが、冷水にも簡単に溶け、炭酸や焼酎、カルピスなどに加えたり、ヨーグルトやパンにジャムのように付けたり、オールシーズン楽しめるのが魅力。最近クニイのお気に入りの朝食は、氷を浮かべた冷たい柚子茶と、細かく切ったトマト、ハム、チーズを挟んだホットサンドです。
●柚子茶ユジャロン公式ページ
http://www.yujaron.com/ |

|